Astro Japonica

楽しい 占星術ノート

Prince, Wendy Melvoin, Wendy & Lisa ②/3


Prince - Nothing Compares 2 U [OFFICIAL VIDEO]

ウェンディにちょっかい出しまくる楽しそうな殿下、若き日のバンドメンバーたち。全編がリハの録り溜め、だいぶ引きの位置での当時の固定カメラに、さらに粗い画質の防犯カメラや隠し撮りのような映像も差し挿まれているが、全く飽きさせないビデオ。どころか目を見張るようなシーンが目まぐるしく続いていき、さすがエンターティナー。彼らにとって大切な1984年の空気の、今になってその蓋が開かれて、かけがえのない秘密を覗いているかのような気持ちになる。

“Prince was one of the singular geniuses, not just of his generation but of popular music as a whole. His songs readily combined the spiritual and the sensual in a way nobody has done quite that well before or since. He transcended race, gender, and genre effortlessly.” というコメントが泣ける。

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ウェンディ・メルヴォインは、プリンスが結成したバックバンド:ザ・レヴォリューションに'83年から参加したギタリスト。当時19才だった。すでにバンドに在籍していたキーボ-ディスト/ピアニストのリサ・コールマンの勧めで加入。ウェンディとリサは長馴染みで、どちらも音楽一家で育った。レヴォリューション解散後、二人は「Wendy & Lisa」という名前でのユニットを開始する。

ちなみにレヴォリューション当時から、20年近くウェンディとリサは付き合っていたらしい。当時ウェンディのことを好きだったプリンスは、ウェンディにはリサがいるため、ウェンディの双子の妹スザンナと付き合い始め、そのスザンナをバンドにコーラスとして参加させていたそうな。笑 その後リサは男性と結婚し44歳で出産したが、「Wendy & Lisa」は今も継続している。

「Kiss」のビデオで見せた、あの自然な表情も同性愛者であり、そういう関係性があったからこそかと思うと、とても人間くさくて素敵だなと思う。もちろん、ウェンディもリサもバンマスとして同志として、プリンスのことを尊敬し愛していただろう。


PRINCE dominates the American Music Awards 1985

'85年のアメリカン・ミュージック・アワードにて、最初の受賞ではサンキューとしか言わないプリンス。次の受賞でプリンスはバンドメンバーに敬意を表してか、先に行くよう促し自分は1番最後に壇上に上がる。ウェンディはこわばったプリンスににっこり笑って手を差し出し、手をつなぐとその手をゆらゆらさせながら、代わりにコメントする。つづいてのポップ・ロック・アルバム賞も勝ち取り、ウェンディはステージの上を男の子のように駆け出し、その背中を見たプリンスもつられて小走り。ようやくプリンスがコメントしようとマイクの前に立った時、ウェンディは口ごもる彼の手に両手を重ねてにこにこしている。バンドメンバーみんなも彼を見守りながら。見ていて泣いてしまうぐらい、いい場面。ウェンディは空気を和らげるのが上手な人だったんだろうな、と思う。


Wendy & Lisa - Honeymoon Express

それにしてもウェンディ・メルヴォインも、相方のリサ・コールマンも、とても魅力的。ウェンディはギターもベースも上手いし、美人でクールに見えるけど実はとても表情豊か。曲もかっこいいし、アレンジもすっきりとしながらとても凝っている。声もかっこいいのと同時に、女性らしい瑞々しくビビットな甘さや、伸びやかなやわらかさがある。CDを聞いていると、メロディが息づくように端正に声色を変化させているのが分かる。

プリンスのあの中毒性の高い、いかにも大サビというようなフックのあるキャッチーさも素晴らしいけれど、個人的にはこういうセンテンスの長い、広がりのあるメロディラインも好きだ。例えばラヴェル「亡き王女のためのパヴァーヌ」、ベリオ「Folk Songs」、Blue Heartsのラストアルバムに入っていた「もどっておくれよ」、マーシーソロ「クレヨン」とか。イタリアのAlice(アリーチェ)の曲や、最近だとViolents and Monica Martinもそうだった。

メロディライン自体が次にどこに行くのか分からないけど、覚えてしまうととても綺麗で、頭の中で幾度も思い出そうと繰り返してしまうような。えもいわれぬような開放感までの抜け道を、繊細に探し当て指し示すようなメロディ。

また長くなってしまったので、チャート読みはまた次回に。