Astro Japonica

楽しい 占星術ノート

8室について⑨ -天体ごと➋水星

8室にある天体、つづき。

【水星】
水星は言語能力・伝達能力・知性を表す。その水星が、8室という圧縮・変容の場所にあると、受容的・探求的で、変容をもたらす知性・言葉を持つ。また、水星は太陽と28度以上離れないため、他の天体と比べて、太陽と同じハウスになりやすい。

周囲の8室水星の人を見ていると、人の話を本当によく聞いていて、アドバイスが上手。この水星が乙女座・双子座にあるなど状態も良いと、たとえ何か他のことをしていても、人の話をちゃんと聞けていたりもする。8室に個人天体があると、はたからはその本人の気持ちは見えにくく、ややもすると興味なさそうにも見えるが、実は相手の話をすごく集中して聞いていたりも。

私の兄が乙女座で、8室に太陽・木星・水星・土星がある。昔に母から聞いたことで、兄が小学3年の時、担任の先生曰く、授業中に友達と遊んでいて注意したが、それまでの先生の話も全部聞いていて言い返してきたらしい。

占い師や占い界隈の人で、8室水星の人はアドバイスが的確で、説得力があり、感心することがある。ただ、一般に水星があると良いとされる1室や3室とは、またちがうタイプではある。例えば、1室は子どもの時からお喋りで、個人的に興味のある事柄や自分発信/発案の話が得意、3室はジャーナリズム的な視点での伝達が得意である。これらの良さは、大方の人に分かりやすい。その対比で考えると、8室は個人対個人間での観察力の高さが最大の特徴に思う。そのため、いくつかの大切な関係/経験を経て後天的にか、もしくは特定の限られた場所・関係性でよく喋る人になることも。

自分から自分の話をするというより、受容的で普段から溜め込んでいるため、人から何か聞かれたら、あとからあとから答えられる、という感じ。8室水星の人は、藪から棒にしたい話をするタイプではなく「応える」知性なので、明確なテーマ・設定・条件、つまり「問いかけ」があった方が話しやすい。そういった慎ましさがあるので、話す相手によって、この人の良さが出たり出なかったり。

8室に太陽・金星などもあると、人に影響を与えること自体が好きなので、アドバイスを求められること、それを実践されることも好きだと思う。逆に、自分が真剣に話を理解しようとしている分、話を受け容れない人がどうも許せなかったり、話の通じない人に相当もやもやしたりも。8室水星の人にとって、会話・言葉・知識によって自分が大きく変化することは、ごく当たり前のことかもしれない。その分、いう必要のないことを思慮なくいう人を疎ましく思うことも。

水星は仕事能力でもあるので、そういった観察力が仕事/作品になることも。8室には遺産・引き継ぐという意味もあるので、何か大切な知識・知恵を授かることにもなる。

有名人では、8室マターのところでも書いた、作曲家のプロコフィエフ、リリ・ブーランジェ、作家のシャーロット・ブロンテスコット・フィッツジェラルド、デザイナーのココ・シャネル、俳優のモニカ・ベルッチダスティン・ホフマン、哲学者のガリレオ・ガリレイジャック・ラカンなど。なので、有名人の水星については、そちらを参照して下さい。また、ミュージシャンでは、ピート・タウンゼント、リトル・リチャード、ミーナ(イタリア人歌手)、心理学者のアルフレッド・アドラーも。

心理学者の中でも、特に有名な3人ともに、7・8室に天体があるのが面白い。カウンセリングは「問いかけ」に応え、相手が本当に求めていることをその観察力をもって考え、変容を促す。アドラーは8室に太陽・水星、フロイトは7室に太陽・水星・天王星、8室に月・土星ユングは7室に太陽・天王星、8室に木星がある。最初にも書いたように、7・8室の天体が単に「その人にないもの」ではなく、1室的な表れ方とは、またちがった表現をするだけなのだと思う。8室の天体のエネルギーは、普段は隠され蓄積され圧縮されて、それが発露する時に変容を起こす、というもの。なので、それは「ない」のではなく、むしろあり過ぎるほど在って、だからこそ出し方を考えなければいけないもの、なのではないか。