Astro Japonica

楽しい 占星術ノート

72度って

クインタイル(72度)は、どういう意味をもつ角度なのか。

円の360度を「5」で割った角度、ということでサインの5番目である獅子座、もしくは5室の意味が引き合いに出される。そこから創意工夫や自己表現など、文化的な角度とも。

「文化」というのは、一定の豊かさがあってこそ享受できるもの、といわれる。獅子座の前の蟹座が意味する「身の安全」があってこそ、楽しむ余裕もできる、ということなのだろう。それと同時に、この身の安全(予定調和・安穏さ)をかなぐり捨ててでも、「文化」に身を捧げる人も、世の中にはたくさんいる。思うに、獅子座はどちらの意味もある気がする。共通するのは、出自のみんなとずっと一緒なのではなく、火のサインらしく自分の意思でもってそこから飛び出す、ということ。周囲がどうであれ、尊厳をもって情熱のままに。

例えば水星に天王星の72度があるとする。その人の言葉(水星)には、生き生きとした(72度)発見(天王星)があり、それは(言葉が生きているという意味で)真にオリジナルなものであり、その発見をした本人と同じ躍動的な感情を聞く人にも与える。その天体間で既製品ではない、予定調和ではない、独創的な新しい何かを作り出そうとする。それは「5」が示す獅子座のように、強い生命力と華がある。72度の角度がある天体間のエネルギーはいつも「生きて」いるため新味があり、その人を惹きつけ続け、他の何にも代えがたいものになりやすい。それ以外の何も気にせずに発展しやすい場所となるので、何かの特技になりやすいだろう。

相性図で72度ができた場合はどうか。お互いに対して、自分にだけ分かる可能性を感じ取ることになるだろう。周りの評価が影響せず、このアスペクトを通して二人だけに分かるノリや共通認識が生まれやすい。そして、これは元素や質もちがう組み合わせなので、単にもともと似ているから気が合う、というのものではなく、自分とは異質だけど惹かれる・その良さがなぜか自分には分かる・そして(スクエアなどのように)ぶつからない、というふうになる。それは相互間の循環によって、今ここから生まれてくる何か新しいものだから。

この72度は、周りの影響を受けにくく自立的に発展・主張が出来る、ということが強みでもあり弱みでもある。アスペクトをとらない他の天体の影響から自由に逃れて、この角度間では未知のエネルギーが充満している。周りがどうであれ充足的に楽しめるということは、裏を返せば他から供給する必要がないため、その輪が外へ広がっていきにくい、つまり他からの影響を受けにくい分、他への影響を与えにくい、ということにもなる。元々獅子座は蟹座のホームを蹴破ってきた存在であり、行動の契機は安心感・立場・お金(蟹座・獅子座の次の乙女座が象徴する土)などのためではなく、純粋に自分の気持ちが盛り上がること・創造的であることなので、ただただ強い魅力・光のような意味の角度だと思う。

個人のチャートに72度があれば、特技になりやすいが、それを広める・何かに活用するには、また別の角度や意識的な努力が必要なように思う。相性のチャートで72度があれば、人の縁がそこからそれ以上に広がるということにはなりにくいかもしれない。お互いが自分にしか分からないような不思議な魅力を感じていて、それは可能性であり、未知のものであるので、うまく伝える言葉がないし、そもそもその関係性があるだけで十分なものでもあるからだ。

72×2=144度のバイクインタイルというアスペクトもある。松村潔「タロットリーディング」を読んでいて、このバイクインタイルというのは、タロットのⅩⅣ 節制ではないかと思った。タロットで最初の「5」はⅤ 法王であるが、その次の「5」は14(=1+4)の節制。5が外に向けた創造・主張としたら、14は内に向けた自己生成(節制の天使が混ぜ合わせる2つの杯は、錬金術の調合を表す)。バイクインタイル単体だと、クインタイルよりさらに外に広がりにくいかもしれない。周りが気にならない上に、もとより内向きの視点になっているので。けれど、既視感でも予定調和でもない、それが到達できるかできないかも分からない未知に対して、誠実さをもって内なる芯の部分から働きかける角度であるとしたら。その対象に対しては、少しずつだか確実に、根底からあますことなく作り変えてしまう力を秘めている、ともいえるかもしれない。生まれた環境から自由になって、自分の意のままに、自分で生まれ変わることができる角度なのだと思う。