Astro Japonica

楽しい 占星術ノート

8室について⑰ - ❿ドラゴンヘッド

ドラゴンヘッドは、過去世からの縁・成功・幸運・解放・欲望・成長・挑戦・遺伝・生まれ変わり・カルマ・魂の課題・羅針盤など、過去と未来を統合する場所などを表す。

月の軌道が、黄道(地球から見た太陽の軌道)と交わるポイントをノードと呼ぶ。ノードは2点あり、月の軌道が黄道を上昇する方をノース・ノード(ドラゴンヘッド)、下降する方をサウス・ノード(ドラゴンテイル)という。これらは180度になっている。なので、ここに何か天体があるのではなく、数学上の点の位置になる。

ケヴィン・バーグ『占星術完全ガイド』には「魂の成長の道が、肉体での経験の道と、交差する場所」「その目的はノース・ノードとサウス・ノードによって示される課題、ギフト、経験といかにして意識的に協調し統合していくかを学ぶこと」とある。ドラゴンテイルはすでに過去世でマスターしたものであり、それを使って今世での課題であるドラゴンヘッドをやり遂げるということ。

ドラゴンテイルは過去にすでに手にしているので、人よりずっと得意なもの。なのに、上手過ぎるせいか、今世の社会では気付かれにくい・認められにくい。例えば、自分よりそれが劣っている人の方が認められるといった経験をしたりも。対して、その真向かいに位置するドラゴンヘッドは、今世でまっさらな気持ちで出来るところで、あまり自信がなくても・熟練していなくても、それが認められてしまう・受け入れられてしまうところ。それをやっていて、本人も飽きないし楽しい。けれどいくら飽きないといっても、それはゼロスタートで効率を考慮する前の「まっさらな楽しさ」なので、そのままでは熟達するまで膨大に時間がかかってしまう。そこでドラゴンテイルですでに手にしているものを上手く使い、ドラゴンヘッドのテーマへと統合していくことが必要になってくる。過去世でつかんだことは、そんなふうに未来のための役に立てる。

おまけのドラゴンヘッドのつもりが、前置きで長くなってしまった。8室にドラゴンヘッドがあるということは、8室の表す分野がこの人の成功しやすいところといえるだろう。「8室の分野とは何か」については、過去記事のこの辺りに書いた。

つまり、8室的なことを職業にすると成功しやすいともいえる。受け入れられやすいということは、逆にいうと、その人が8室的なことに携わると単純に魅力的でもあるということ。キーワードは、関係性・隠された場所/面・研究/探求的・ダークファンタジーデカダンス・ゴシック・ダーティーなど。密閉された変容の場所なので、熟成・発酵・醸造・毒を溜め込むような場所でもある。

90年代を代表するオルタナバンドのヴォーカリストカート・コバーンビリー・コーガンは誕生日が約1ヶ月違いで、そのどちらもに8室のドラゴンヘッドがある。そう、90年代のロックは激しく暗かった。カートは汚れた川の橋の下で魚を釣って暮らしていて、成功後は薬物中毒と精神病に悩まされ自殺(他殺説も根強いよう)。ボロボロの服を着てそれがファッションとして流行し、グランジ(薄汚れた)と呼ばれた。ビリー・コーガンはデビュー時はまだ爽やかな印象だったが、スキンヘッドにし、バンド全体がゴシック的なメイクや衣装で統一されてから人気が不動のものとなり、そのイメージがアイコンとなった。この二人はドラゴンヘッドが牡牛座にあり、ということは2室蠍座・8室牡牛座で、つまりハウスとサインが入れ替えになっている。ドラゴンテイルは蠍座なので、蠍座的なことは才能・資質としてすでに持っていて、それを元にマイペース(牡牛座)に探求する(8室)。彼らは蠍座的な汚れ役的な雰囲気と、牡牛座的なあどけなさやおっとりした雰囲気も併せ持っている。ちなみに両者とも複雑な家庭ながら、家族から愛されて育った生い立ちを持つ。

ツイン・ピークス』などで知られる映画監督、デヴィッド・リンチも、8室にドラゴンヘッドがある。ほとんどの映画が深く謎めいていて、物語が進むにつれ酔いそうなほど不可解だ。その何とも言い難いダークな作風がカルト的な人気となった。ドラゴンヘッドは双子座にあり、リンチ作品の特徴の1つ、あの不気味な沈黙を思わせる。双子座は風星座で知性的で話が上手いといわれるサインだが、それと同時に時として頑なに空気を読ませるサインでもあるからだ。言葉にしたくないことは聞いても答えない、空気で読ませる、というふうに。さらに8室のカスプの5度前には天王星があり、これは現実の壁を破る天体である。あの不気味な「沈黙」は、日常から異界へと、みるみるうちに突き落とす。神経症的であり、出し抜けにブラックジョークが挟まれるのも双子座的である。

ジャズのマルチプレイヤーエリック・ドルフィーも、8室に双子座のドラゴンヘッドがある。多くのリード楽器を操りながら技巧派で、フリージャズ的でもありながら、大学で音楽学を専攻し非常に理論的でもあった。ドラゴンテイルは射手座なので、ノードは双子座と射手座の組み合わせ。また8室には双子座の太陽・金星、2室には射手座の土星もあり、さらにこの両者のサインが強調されている。その演奏は、時に冗長なほどのきめ細やかな構築性(射手座)と、その上での神経質なほど整然とした気まぐれさ(双子座)を、丹念に行き来するのだ。


レジェンド的SSWの一人、ニール・ヤングドラゴンヘッドは、8室で蟹座にある。アメリカという国自体が蟹座的であるし、そのアメリカのルーツ音楽に向いている配置ともいえるかもしれない(ニール・ヤング自身の出身はカナダだが)。ボブ・ディランとの比較で「決定的な名曲がない」などの声もあるようだが、むしろこの蟹座的な生の感情のまま、衒いなく流れていく音楽が心地良いように思う。後の世代の気難しそうな、カート・コバーン(遺書にニール・ヤングの歌詞を引用)やトム・ヨークレディオヘッドで1番多くカバーしているのがニール・ヤング)にも敬愛されている。ニール・ヤングも8室カスプに天王星があり、愛嬌・素朴さ(蟹座)が爆発(8室)していて、聴く人の心の壁をほぐす(天王星)ことが出来るのだろう。



成功した人たちのドラゴンヘッドを見ると、かなり分かりやすく出ているように思う。ドラゴンヘッドは天体ではないので、自分自身や身近な人では分かりづい部分もあるが、8室に限らず同じ配置の有名人を見てみると、その「可能性」に気付きやすい。

またこのドラゴンヘッドが太陽・ステリウム・強い天体とハードアスペクトを取っている場合、それらと切り替えのように使うか、もしくはダークヒーローやアンチヒーロー的な生き方を貫くのもいいかもしれない。それはそれで見る人によっては刺さって、心に残るからだ。

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はてさて、今日は麻布十番・燦伍にて鑑定してます。3/25(月)15-20時頃、よろしくお願いします🍹