Astro Japonica

楽しい 占星術ノート

6. This Charming Man - The Smiths


↑上はベルギーの音楽番組に出演した時のもので、ちょっともう面白過ぎて大好きな映像の1つ。のっけからオチまで、つっこみどころ満載。

当時、本国のイギリスも含めて、殆どの音楽番組はバックに正規音源を流した弾き真似のパフォーマンスだった。それでバンドマンたちはだんだんと「弾き真似」というお題の大喜利合戦に。笑 その中でもこれは出色の出来なのでは。

以下を読む前に、先に映像を見た方がいいかもしれません。女性司会者の紹介のあと急に曲が始まって、ギターの弾き真似が明らか間に合わず「あっ」ってなってるけど、しれっとちゃんとかっこよく弾き続けるマー。モリはマイクの代わりに菊の花束を持ち、ぶんぶん振り回し続けてる。小さな階段型のステージに花びらや葉っぱが音もなく散らばり、何とも示唆的な絵に。モリの表情は終始、陶酔してるのか、笑いをこらえてるのか、照れてるのか絶妙過ぎて面白い。今にも倒れそうなぎりぎりまで伸びたソフトリーゼント(正確にはクイッフというらしい)は、野分が通ったあとみたいで、その上に葉っぱがちょこんと乗っかってる。腕時計はいつも通り逆向き(内向き)で、ベルトをちゃんと最後まで留めないなど、当時ですでに細かいところまで抜け感が過ぎてる。

また2番のあとに、ふいに天井から謎の逆三角形が現れ、ベーシストを覆い隠してしまう。それに気付いたアンディが一瞬身をかわしてみるけど、もう遅い。逆三角形はどんどん大きくなる。そこに古い映画(このシングルのジャケットの元となったジャン・コクトーの『オルフェ』)が映っているうちは、まあ演出かなとも思えるけど、終わりらへんはグリーンバックのように特に何も映さないピンクの三角がベースを隠すためだけに浮かんでいる。それをよそに、マーはギターを弾くフリもしまいには放棄して、モリと仲良く踊りながらこの映像は終わる。いい時代ですねー。マーの自伝にあったように、モリとマーはおそろいのコーデュロイシューズを履いている。

80年代の男性歌手といえば、マッチョな体育会系かギラギラなメイクの人かという時代に、オーバーサイズのマダムご用達チェーン店で買ったブラウスに、じゃらじゃらとにぎやかしのようなビーズのネックレス、というのがお茶目過ぎておしゃれ。フェミニズムに傾倒していたモリだからこそ、難なく馴染んでいたように思う。個人的に以前から「風星座が1番おしゃれ説」を唱えているけれど、またもやその好例を見てうれしくなった。

そして色々面白いのだけれど、何よりこの曲は名曲だし、神がかってて美しい。先の自伝でもこの曲が出来ていった経過が丁寧に書かれていて、マー自身が完成したプレイバックを聞いて「僕のバンドは最高のバンド」と感激している。こういう、ど名曲をちゃんとまっすぐ熱唱したり、熱演したりしているところ、私にとってスミスが特別である理由の1つ。まあテレビ出演はフリで大喜利なんだけど。元々フロント兼作曲チーム2人が、3分ポップスに深い愛情と畏敬の念を持っていたからこそ。

この曲で、本国での「トップ・オブ・ザ・ポップス」に出演した数時間後、地元マンチェスターのライブでは、キャパよりさらに1,000人以上を超える人たちが詰めかけたそう。

僕らの〈トップ・オブ・ザ・ポップス〉出演がいかに記憶に残る衝撃的な出来事だったか、ということを何人もの人間から言われたが、実際そのインパクトは大きかった。僕らが想像していたよりもはるかに。たった2分45秒で、イギリス中のキッズが僕らを目にした。そして僕もクイッフにする、ギターが欲しい、ボウル・カットにしたい、と言い出し、母親や姉のクローゼットのブラウスやネックレスをねだるようになったのだ。
 ―『ジョニー・マー自伝』より


有名な曲なので、訳している方も多いけれど、自分なりに意訳してみました。でも多分だいたい合ってるはず。再発盤からこの曲が1stに組み入れられたので、アルバム冒頭からどんどんどつぼにはまっていた歌の流れから、急に別のバンドみたいにこの曲でキラキラするのはご愛敬。でも歌詞は短くなっただけで、相変わらずシャンソンみたいに辛辣。

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6. この魅力的な男

パンクした自転車
寂れた丘の斜面で
自然は未だ 僕を男にさせたいの?

その時 その魅力的な車から
この魅力的な男

なぜ人生の複雑さを 野放しにさせてる?
助手席の革張りは こんなに気持ちいいのに

今夜 出かけてみたいけど
着て行く服がないんだ
その男はいった、
「こんなハンサムな子が 
 そんなことで悩むなんて どうかしてるよ」

ああ、思い上がった使用人の少年
自分の居場所なんて 知る由もなかった
男はいった「指輪を返して」と
彼にとっては そんなこと分かり切ってる
彼にとっては そんなこと分かり切ってる

今夜 出かけてみたいけど
着て行く服がないんだ
その男はいった、
「こんなハンサムな子が 
 そんなことで悩むなんて どうかしてるよ」

この魅力的な男
この魅力的な男

ああ、思い上がった使用人の少年
自分の居場所なんて 知る由もなかった
男はいった「指輪を返して」と
彼にとっては そんなこと分かり切ってる
彼にとっては そんなこと分かり切ってる

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6. This Charming Man

Punctured bicycle
On a hillside desolate
Will nature make a man of me yet?

When in this charming car
This charming man

Why pamper life's complexity
When the leather runs smooth
On the passenger seat?

I would go out tonight
But I haven't got a stitch to wear
This man said, "It's gruesome
That someone so handsome should care"

Ah, a jumped-up pantry boy
Who never knew his place
He said, "Return the ring"
He knows so much about these things
He knows so much about these things

I would go out tonight
But I haven't got a stitch to wear
This man said, "It's gruesome
That someone so handsome should care"

Na, na-na, na-na, na-na, this charming man
Oh, na-na, na-na, na-na, this charming man

Ah, a jumped-up pantry boy
Who never knew his place
He said, "Return the ring"
He knows so much about these things
He knows so much about these things
He knows so much about these things