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楽しい 占星術ノート

ジュリー・デルピー、『ビフォア』シリーズ

ジュリー・デルピーのことを書いていて、そういえばすごく好きな女優さんなのに、フランスでの映画(『トリコロール』シリーズ、『汚れた血』)しか見たことないな、と思った。

1番信頼できる映画評論家として名高い、宇多丸先生もほめてた『ビフォア』シリーズがアマプラにあって見てみたら、これがまあ。『ビフォア』シリーズは9年ごとに公開された3作で、完結編『ビフォア・ミッドナイト』はネット上では見れないのだけど、素晴らしいシリーズだった。ネタバレになるので、内容は書かないようにします。

ただストーリーだけ捉えると、いたってシンプル。ほぼ全編が会話劇で、その言葉や掛け合いが続いていく。何よりその時々の、一瞬一瞬の2人の機微が美しい。また行く先々の風景が何てことないのだけれど、その機微と相まったら途端に心に刺さるところも、とてもリアル。監督の実話が基になっていて、この映画を作ることでモデルとなった女性と再会を望んでいたが、1作目公開の数週間前にその女性はすでに亡くなっていたらしい。映画では小説としてこの物語が世に出て、再会する。それもあって、この「一瞬」の連なりはずっと、もういない誰かに宛てたメッセージであるかのよう。

1作目『ビフォア・サンライズ』の相手役のセリフにもあるように、「ボッティチェリが描いた天使のような」ジュリー・デルピーが本当ーにきれい。唯一無二の美貌と雰囲気だけれど、それだけではないことに、今頃になって気付いた。表情が多彩でかわいらしいが、どれも深い。長い長いセリフの言葉は、彼女が言うことでその全部に命が宿っている。言葉の意味を生きている。それでいて軽快なリズムが崩れない。ちなみにこの映画は英語なので母国語ではない。改めてすごい女優さんだなと思った。『汚れた血』の時は16、17才だったようで、存在感がすでに完成されていたことに今さらびっくりする。

youtubeでこの『ビフォア』シリーズをまとめた動画があり、それに使われていた曲がMazzy Star "Fade Into You"なのも何か良かった。映画を見たあとだと、何とも言い得て妙。蛇足ながら拙訳を付けておきます。

Fade Into You

I want to hold the hand inside you
I want to take the breath that's true
I look to you and I see nothing
I look to you to see the truth

You live your life,
You go in shadows
You'll come apart and you'll go black
Some kind of night into your darkness
Colors your eyes with what's not there

Fade into you
Strange you never knew
Fade into you
I think it's strange you never knew

A stranger's light it comes on slowly
A stranger's heart without a home
You put your hands into your head
And then smiles cover your heart

Fade into you
Strange you never knew
Fade into you
I think it's strange you never knew

Fade into you
Strange you never knew
Fade into you
I think it's strange you never knew
I think it's strange you never knew

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あなたの中にいて その手を握りたい
本当にそこで 息をしていたい 
あなたを見つめるけれど
何も見えてはこない
あなたを見つめるのは
そこに真実を見たいから

あなたは自分の人生を生きて
影の中へと沈む
あなたは砕け散って
盲目となる

あなたの闇のような この夜に
ここにはないもので
あなたの目に色をつけよう

あなたへと 消えていく
不思議と、あなたが知ることはない
あなたへと 消えていく
あなたが 気付くことはないなんて
不思議に思う

ゆっくりと灯る 見知らぬ光
家を持たない 見知らぬ人の心
あなたは その両手を頭に入れては
微笑みで 心を覆ってしまう

あなたへと 消えていく
不思議と、あなたが知ることはない
あなたへと 消えていこう
あなたが 気付くことはないなんて
不思議に思う