Astro Japonica

楽しい 占星術ノート

8室について⑮ -天体ごと❽海王星

*20240301 写真を追加しました

海王星ビジョン・インスピレーション・(土星の)壁を溶かす/ぼかす・想像力・神秘的・幻想・幻惑・陶酔・不可思議・夢・癒し・犠牲・幽霊・詐欺・欺瞞・酒・薬物・病気・天然ボケなどを表す。土星より外側の軌道である外惑星は、土星の壁(現行の社会の枠組み)を崩す。天王星でのそれは割られる形だったが、海王星は溶かす・ぼかすといった形。もしくは気付かないうちに、壁の内側が浸食され、それが溢れ出し壁を超えていく。ゆらゆらとやわらかなものが、いつしか影響を及ぼしたり、飲み込んでいったり。そしてそれは美しかったり、神秘的・幻惑的であったりするから、現実を浸食できるのだ。圧縮・増幅の8室に海王星があると、こういったつかみどころのないものが独自に濃くなっていく。

以前からの繰り返しになるが、8室は他者といる時の関係性・感情であり、それはカメラを向けられた時の表情でもある。8室の海王星を持つ人は、他の天体と比べて、映画関係者が多い印象。俳優のポール・ニューマンモニカ・ヴィッティ(+月、木星)、ダスティン・ホフマンアンソニー・ホプキンスカトリーヌ・ドヌーヴ、映画監督のフランソワ・トリュフォーフランシス・フォード・コッポラアンドレイ・タルコフスキー(+火星、冥王星)など。俳優・監督ともにやわらかな微妙な表情、どこかつかみどころのない存在感が印象的。

ポール・ニューマン

モニカ・ヴィッティ

フランソワ・トリュフォー

フランシス・フォード・コッポラ(中央)

アンドレイ・タルコフスキー

映画は幻影を多くの人へ共有し、観た人の心に入り込むもの。8室海王星の人は忘我の状態に抵抗がないので、そういうビジョン・お伽話・夢の世界の中にすっと入り込みやすい。例えばこれを「憑依力」といったらいいだろうか。映画の世界の中での存在感が自然なので、逆に難しい役柄が映える。

羊たちの沈黙』での精神科医で猟奇殺人犯など、難しい役柄を演じ切るアンソニー・ホプキンスは、事前の役柄へのリサーチなどは一切しないという。むしろそういったハリウッドでよくあるアプローチを一蹴していて、「必要なことは全て台本に書いてある」と。一般的に思われている「知っている情報が多いほどその役になり切れる」といった理屈を超えられる、想像力・共感力、ひいては憑依力を持っているエピソードのように思う。

ヒットラーを風刺した映画を製作したチャップリンは、ヒットラーと同じ年に生まれ、誕生日はわずか4日違い、さらに8室に海王星冥王星というのも一致している。8室海王星の人は良くも悪くも、人々に夢を見せてとりこにさせるのが上手いといえるだろう。

作曲家ではドビュッシー、シェーンベルグプロコフィエフ(+太陽、水星、火星、冥王星)など。ドビュッシーは伝統(土星)的な音階・和声を、シェーンベルグは同じく伝統的な調性を、土星の壁を溶かすように徐々に逸脱し、新しい作曲法を確立させた。枠に捉われず、作曲における自由度を上げたといえるだろう。そう考えると、土星を溶解させるには、その土星の枠がどこにあるのか、どういうものなのか、理解・把握しておく必要があるのかもしれない。

また海王星には犠牲・癒しなどの意味があり、なのでそのぐらい極端に優しかったり、サービス精神旺盛な人も。詩人のリルケ、俳優のチャップリン(+冥王星)、ポール・ニューマン、ミュージシャンのシンディ・ローパー(+土星)、マイケル・ジャクソン(+木星)、スヌープ・ドッグ、芸人の岡野陽一など。ポール・ニューマンは立ち上げた会社の設立以降の純利益を全額寄付したり、他の人も慈善活動・社会活動、またサービス精神の旺盛さで有名。岡野陽一は人が良すぎて友人たちからだけで1,200万借金している。さておき、ただ人格者というだけでなく、優しすぎてどこか得体の知れなさもあるのが共通している。

海王星は、金星や木星の1オクターブ上の天体といわれている。金星は優しさ・愛情、木星は寛大さ・発展などを表す。金星や木星はいわゆる幸運の星といわれ、社会的な得、つまり実利をもたらすが、1オクターブ上である海王星は、社会的に得する範囲をゆうに超えてしまう。なので、損得抜きの感性が行き過ぎて、時に度を越して親切であることにもつながる。

それと同時に、土星の壁(現行・現実)を境に悪い意味でひっくり返ってしまうと、最初にも書いたように「犠牲」などの意味にもなりやすい。もとより海王星の「夢」は広がりやすいのだけれど、8室ではそれがさらに独自に醸成するので、収拾が付きにくいことにも。「幻惑」「陶酔」などの意味に飲まれて、大ぶろしきを広げたり、足元がおぼつかなかったり。かつ現行・現実の枠を超えて微細なことまで感受できるほど繊細なため、逆に現実的な目線から見るとあっけないほど自暴自棄になりやすいところも。

8室海王星の人は、大事な局面で自傷的で犠牲的な選択をするのではなく、なるべく誰かのために、というよりも何よりせっかくのビジョン・インスピレーションの力を、自分の将来のため本来の意味でまっすぐ使えるよう、方向性をコントロールする必要がある。もしくはコントロールし切れなくても、自分の海王星を自覚して楽しめるようになるだけでも、かなり楽になるはず。

海王星天王星の比較で言うと、影響が分かりにくく、その分飲まれやすく見誤りやすい。天王星は壁の正面突破や離脱など、割と分かりやすい出方をするが、海王星は壁を徐々に溶解するか、氾濫の結果として決壊するので「いつの間にか」であり、さらに「視界が曇っていて」分かりにくく、気付いた時にはもう収集がつかなかったりもする。奔流は必ずしも透き通ってはいない。むしろ清濁併せ持ちながら、そしてより下層に流れていく。よく外惑星の影響は分かりづらい、使いづらいといわれるが、だからといって影響が「全くない」というのとは明らかに違う。茫洋とした、でも長い目で見ると明らかに大きな影響力があるからこそ、自我・意識、つまり「どうなりたいか」「どうしたいか」をはっきりさせておく、自覚しておいた方がいいように思う。

---

さて、今日2/20(火)は麻布十番・燦伍にて、鑑定してます。15-20時、それ以後もご予約いただければ可能です。