Astro Japonica

楽しい 占星術ノート

8室について⑭ -天体ごと❼天王星

天王星革新・改革・(土星の)壁を壊す・反抗・離脱・離反・突発・自立・独立・発見・発明・電気・科学・構造などを表す。この天王星から土星の外を運行する、外惑星になる。土星を「現行の社会の枠組み」とすると、外惑星はそこから逸脱する。どう逸脱するかは天体によって変わり、天王星は現行の社会の壁を正面突破するか、一抜けする。なので、その場で反抗・表明・離脱など、割とはっきりと事象を起こすことになる。「構造」の意味もあるのは、そのように何かの集団・形あるものから外へ出て、引き・俯瞰で物事を見るからである。圧縮・増幅の8室にこの天王星があると、これらの意味がブーストする。

前回の土星と同じく、8室天王星の人の表情も、見ていくと面白い。俳優のマリリン・モンロー(+火星)、アラン・ドロングレタ・ガルボモニカ・ベルッチ(+金星、冥王星)、詩人のアルチュール・ランボー、作家のアントン・チェーホフジェイムズ・ジョイスウラジミール・ナボコフ、画家のロートレック、映画監督のデヴィッド・リンチ(+火星、土星)、ミュージシャンのデヴィッド・ギルモアロバート・プラント(+金星、冥王星)、ニール・ヤングニック・ケイヴロバート・スミス(+冥王星)、クラッシック奏者ではマルタ・アルゲリッチ(+土星)、ロストロポーヴィチ(+太陽、冥王星)など。

8室は他者といる時の感情で、それが写真を撮られる時の表情にも表れる。そこに天王星があるということは、感情表現が自立的であり、そこに独自の意志が貫かれていて、周囲や相手に取り込まれず、または程良い距離感がある。それでいて、土星ほど冷たい・厳しい・閉鎖的な感じはしない。むしろ開かれていて爽やかであり、すっきりしている。感情表現が独立的なので、周りが暗くても笑える、盛り上がっていてもすんとしていられる人でもある。

俳優陣、マリリン・モンローアラン・ドロングレタ・ガルボモニカ・ベルッチなど、表情も洗練され凛としていて、スターとしてほぼ完璧な雰囲気がある。主役を張る人は、周りとあまり馴染み過ぎても良くないので、そうでないことがかなりプラスとして出ているように思う。また古い写真にはなるが、チェーホフジョイスナボコフ(特に若い頃)、ロートレックロストロポーヴィチの写真を見ると、無表情でもどこか飄々とした、とぼけた感じが天王星らしい。写真を見てもらえたらニュアンスが伝わるかと思う。

チェーホフ

ジョイス

ナボコフ

ロートレック

 

ロストロポーヴィチ

8室天王星は書籍に「突然の死・破産」と書かれていたりするが、そこまででなくても、例えば組織からの急な離脱、キャリアの突然の変更などもある。詩人のランボーは8室に土星天王星があり、10代のうちから相当な放浪癖があった。15才で詩作開始し、すでに詩人として知られていたヴェルレーヌに手紙を送り、パリへ上京。芸術家らと知己を得たが、粗暴な振舞からコミュニティから追い出された。ヴェルレーヌとは恋人関係になり二人で旅に出るが、激しい関係のため別れ、その時にほんの数年の詩作もやめてしまい、エチオピアで貿易商となる。その10年後に腫瘍で脚を切断し、わずか数か月後の37才で亡くなっている。

圧縮・増幅の部屋である8室に天王星があると、天王星の意味が極端に強まる。過度に反抗的であったり、ひとところに落ち着けなかったり。8室が表す遺産・立場など、人から見て恵まれたものを受け取る機会が来たとしても、すぐに手放す・離脱してしまうことも。以前に鑑定で「私の夫は、遺産を話し合いもせずに他の親族にあげてしまう」という方がいて、その「夫」にあたる方も8室に天王星があった。

秋月さやか先生『正統占星術入門』には、「祖先の遺志や才能を受け継ぐ」「遺伝的な才能が発揮され、天才児を生み出しやすい」とある。オーギュスト・ロダンに才能と生涯を搾取された、カミーユ・クローデルも8室に天王星がある。ランボーもそうだが、受け取れるはずの報酬・恩恵が受け取れないという意味と合わせて、私の周りでも何人かこれにあてはまる人がいる。天王星の管轄である水瓶座冥王星が入り、「復活」の力が強まるので何とかこれから頑張ってもらいたい。

上に挙げた人たちを見ても、前の世代になかった感性・表現をラジカルに示した人たちといえるだろう。また作風にその分野での解像度の高さ、冴えを感じることも。予定調和になりづらいので、覚悟は要るかもしれない。なぜなら天王星はタフではない。革新性に満ちているが、そもそもその分、安定・安全を自分で捨て去っているので、現実的には儚いということにもなりやすい。