●Jeri Southern
Jeri Southernは1926年8月5日生まれ。個人的にジャズシンガーの中で1番好きな歌手。一聴して温かくほのかにおどけたような歌だけれど、耳を澄まして声を追っていくと、言葉と情感を声で丹念に結び付けようとしているのが伝わってくる。
その心のこもった、たどたどしさ・ぎこちなさ自体が表現になっていて、そのままジャズのグルーヴにもなっている。何という心のある離れ業なのだろう。技術の中に人間性が息づいている。心から始まったものが必然性を掴んでいて、何度聴いても初めて聴いた時の感覚が蘇ってくる。
彼女はそもそも人前で歌を歌いたくなかった。バーでピアノを弾いていたところ、弾き語りの方が人気が出るからと勧められ、歌い始めたのがきっかけ。デビューして10年間活動したのち、人気絶頂のころにあっさりと引退している。「根っからのシャイ」であった彼女にとって、人前での演奏やショービズ界は合わなかったらしい。英語版のWikipediaによるとステージでの演奏について考えるだけで、不安のあまり落ち込んでいたようで、それらは精神的にかなりの負担であったようだ。
獅子座生まれだが、蟹座に月・金星・冥王星・ドラゴンヘッドがある。情緒・感受性を表す月・金星が両方とも蟹座で、かなり内気で鋭敏な感性を持った人。月は0度やマイナーアスペクト以外はノーアスペクト、金星も土星ぐらいで、繊細な感受性は内に秘めたまま、なかなかオープンにしづらい。
けれどここにドラゴンヘッドもあるので、本人が不安に思っていたその感性こそが、たくさんの人に愛された。冥王星もあるので、表面的ではない、とても深い情感。パフォーマンスを表す火星には、かなりタイトにカイロンが乗っている。外に向かって何か発する度に、過去の傷みに触れることもセットであり、同時に人を癒すことにもなる。
歌っている映像もジャケットの写真も、殆ど無表情に近いが、緊張でこわばっていたのかもしれない。けれどひとたびピアノを弾くと、歌を歌い出すと、とてもリリカルで、歌詞にどこまでも寄り添うような情感が溢れる。普段、本当に大切なものは内に秘めて、音楽でだけそれを解放していたのだろう。
前回のVeronica Bennett (Ronnie Spector) が柔軟宮5つだったのと打って変わって、彼女は魚座の天王星のみ。
前回:
固定宮6・活動宮3で、あの歌のぎこちなさはこの辺りなのかも。柔軟宮は潤滑油的な働きを表す。その柔軟宮が世代天体1つだけということで、正にどこか「油が切れた」ような感じもあって、でもそれがとてもいいのだ。何とも実直に感じられて、歌詞に素直に聴き入ってしまう。
私が初めて聞いたのは中学生の頃、夕方のラジオでだった。エアチェックしながら聴いていて、あまり他のジャズシンガーから歌われない、彼女自身の弾き語りによる「I'll Wear The Green Willow」が流れた。
今聴いても、独特ながら必然性しかないフレージングにびっくりする。ふいに気温や湿度が上がる、夏の懐かしい記憶みたいだとも思う。この曲を聴いた時から1番好きな歌手で、それは今もそう。いつだって彼女の声を聴くと、心がどこにあったか思い出す。